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算スキームでは、NICE法ではBLモデルが、WISDAM法では、ゼロ方程式モデル的に用いられたSGSモデルとBLモデルの混合モデルがSR研究開始時に組み込まれており、これらのモデルの適応性を調べ、精度向上を目指して改良するのが、本SRの主要テーマの1つである。ゼロ方程式の次に単純なモデルは、乱流を表す1つの変数に関する場の方程式をNS方程式と連立させて解く1方程式モデルである。そして、工学的によく用いられているモデルの中で最も複雑なのが、2方程式モデルであり、その中でも、乱動エネルギーκとその散逸率εの2つを変数とするκ一εモデルが最もよく用いられている。本SRでは、これら高次の乱流モデルについては、将来に向けた研究の1つとして取り組んでいる。
(2)計算スキームの選定
(a)選定方針
CFDの数値計算法には、差分法(Finite Difference Method:FCM)、有限体積法(FiniteVolume Method:FVM)、有限要素法(FEM)、等があるが、船舶分野では、以前から差分法や有限体積法が多く用いられてきた。3年間という短い研究期間に有効な推定法を構築するため、平成5年度の研究開始時に、今後実用的推定法として発展が期待できる有力な計算スキーム(計算手法)を調査し、以下の選定条件により選定した。
・船尾流場計算(流場、抵抗、伴流分布)ができ、自由表面付計算への拡張性がある。・前後処理を含む一貫システムをもち、EWSで走る等、計算時間が妥当である。・技術的基盤が確かで検討実績があり、実用化の期待がもてる。
その結果、「NICE法」と「WISDAM法」を選定した。この2つの計算スキームは互いに異なった特徴を持っており、応用性の拡大の見地と計算結果同士の検証という見地から、改良を並行して進めた。
(b)NICE法(Navier−Stokes Solver Using Implicit Cell-Centered Formulation)
有限体積法に基づく計算スキーム。船型表現・格子生成・NSソルバー・後処理のコード群がらなる、一貫したシステムを構成している。NSソルバー部の特徴は、連続の式に圧力の時間微分項を人工的に付加した、擬似圧縮法を用いていることにあり、

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速度場と圧力場が強くカプリングされ、時間積分に陰解法、空間差分に前処理(MUSCL)型3次風上差分の採用など合わせて、定常流を効率良く解ける、ロバストな計算法となっている。乱流モデルは、計算が容易なBLモデルを用いる。
(c)WISDAM法(Wave vlScous flow Differene A?urate Method,WISDAM−V)WISDAM−V法も、NICE法と同様に有限体積法に基づいたNSソルバーであるが、NICE法との大きな違いは時間場解法を用いている点であり、非定常流計算にも適用できるという長所を持つ。時間刻みが小さいため、定常流計算には、やや計算時間がかかる。変数配置は、スタガード変数配置を採用している。対流項に3次上流差分(風上差分)を用い、速度場の更新は、陽的時間積分によって行われ、圧力は、次式のポアソン方程式を、反復解法であるSOR法を用いて解いて、更新される。

 

 

 

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